「右の下腹部が痛い…」
「もしかして病気…?」
女性特有の右下腹部が痛む原因として、
- 子宮内膜症
- 子宮筋腫
- 卵巣腫瘍
- 子宮腺筋症
- 卵管炎、骨盤内腹膜炎
の病気が考えられます。
病院に行くべき症状や放置するリスクもご紹介します。不妊の原因となる病気のケースもあるので、最後まで読んで対処しましょう。
監修者
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
内科医
岡村 信良先生
経歴
平塚共済病院 小田原銀座クリニック 久野銀座クリニック
原因1.「子宮内膜症」のケース
子宮の内側のみに存在する子宮内膜や子宮内膜様組織が、子宮以外の部分に生じて発育する疾患です。
つらい生理痛がある方は要注意です。不妊の原因になる場合もあります。
子宮内膜が子宮以外(卵巣、卵管、膣、外陰部、膀胱、仙骨子宮靱帯、ダグラス窩 等)に生じている状態です。
子宮以外に生じた子宮内膜でも、月経が始まると剥離・出血があります。しかし、内膜や血液を体外に排泄できず、体内に溜まってしまうと、古い血液が貯留した袋状のものができて、卵巣が腫れたり、各種臓器と癒着したりする恐れがあります。
どんな人がなりやすい?
- 妊娠経験がない女性
- 20~40歳代の女性
- 月経周期が短く、月経の期間が長い女性
<腹痛の特徴>
- 激しい生理痛を伴うことが多い
(引き裂かれるような痛みと表現されるほど堪え難い)
- 腹部の張り感
<腹痛以外の症状>
- 不正出血
- 月経過多
- 腰痛
- 頭痛
- 性交痛(ダグラス窩に生じた場合)
- 排便痛(直腸に生じた場合)
- 下血、血便(小腸に生じた場合)
- 血尿(膀胱に生じた場合)
原因2.「子宮筋腫」のケース
子宮筋腫は、多くの女性が、知らず知らずのうちに抱えている良性腫瘍です。
卵巣から分泌される女性ホルモンにより大きくなります。不妊や流産の原因になる場合があります。子宮内側に生じた筋腫の場合、痛みが強い傾向があります。
どんな人がなりやすい?
- 20~50歳代の女性
- 初潮が早かった女性
- 妊娠、出産の経験がない女性
- 肥満傾向の女性
<腹痛の特徴>
<腹痛以外の症状>
- 月経過多(血液の塊が出る)
- 月経の期間が長い
- 月経以外の出血
- 貧血
- 腰痛
- 性交痛
- 便秘
- 排尿困難
- 頻尿
原因3.「卵巣腫瘍」のケース
子宮の左右に1個ずつある卵巣内の組織から生じる腫瘍です。
腫瘍が大きくなるまで無症状の場合が多いです。
卵巣腫瘍は、①嚢胞性腫瘍(液体が溜まった腫瘍)と、②充実性腫瘍(固形腫瘍)に分けられます。
①嚢胞性腫瘍は、卵巣腫瘍のおよそ80%以上を占めており、その多くが良性腫瘍です。
一方、②充実性腫瘍のおよそ70%は悪性腫瘍と考えられています。
どんな人がなりやすい?
- 若年層から中年期まで幅広く発症する
- 月経不順の人
- 妊娠、出産の経験がない、または少ない人
- 加工肉や脂肪分の多い食事が多い人
<腹痛の特徴>
- 卵巣腫瘍の付け根が捻じれると、突如激しい下腹部痛が起こる場合が多い
- 卵巣腫瘍が破裂すると、激しい下腹部痛が起こる場合が多い
<腹痛以外の症状>
- 吐き気(嘔吐)
- 頻尿
- 便秘
- 下半身のむくみ
- (腹水が溜まると)お腹の膨らみ
原因4.「子宮腺筋症」のケース
子宮全体、一部分が厚くなることで、子宮が腫れて大きくなります。
子宮内膜によく似た組織が、子宮筋層内にできてしまう疾患です。
①びまん型(腺筋症が子宮筋層全体に拡大する)と、②限局型(一部分に限局する)に区別されています。原因2の「子宮筋腫」を併発するケースがあります。
どんな人がなりやすい?
- 30歳代後半~50歳代の女性
- 妊娠経験がある人
- 流産経験がある人
- 月経痛が強い人
<腹痛の特徴>
<腹痛以外の症状>
- 月経過多
- 貧血
- 倦怠感
- 腰痛
- 排尿痛
- 排便痛
- 骨盤痛
原因5.「卵管炎、骨盤内腹膜炎」のケース
クラミジア、淋菌、結核菌、尿路や消化管などの細菌感染が原因となります。子宮や卵管やその周りの組織に炎症が生じている状態です。
細菌が繁殖する状態が続いたり、性交渉などで感染することがあります。
悪化すると、「骨盤腹膜炎」を発症する恐れもあります。「骨盤内腹膜炎」を繰り返し発症すると不妊リスクが高まると考えられています。
どんな人がなりやすい?
- 20~24歳くらいの女性
- 長時間タンポンを使用し続けた場合
- 不特定多数との性交渉
<腹痛の特徴>
- 徐々に痛みが増す下腹部痛
- 慢性期は鈍痛が生じやすい
<腹痛以外の症状>
- 発熱
- おりものが増加する
- 腰痛
- 倦怠感
- 吐き気
- 嘔吐
- 不正出血
こんな症状なら病院を受診しよう

以下の症状がある場合は、病院を受診しましょう。
- 粘性が強いおりものが出る
- 徐々に下腹部痛が悪化している
- 月経のとき以外で下腹部痛が生じている
- 排便時に痛みがある
- 肛門の奥あたりに痛みが生じている
- 月経異常がみられる
- 下腹部の違和感、骨盤痛、頻尿、便秘、下痢等の症状が2週間以上続いている
特に「早めに病院へ」行くべき症状
次のような症状がある際は、早めに病院を受診してください。
婦人科系疾患の場合、無症状のうちに症状が進行し、気が付いたら悪化していたというケースがあります。
- 激しい痛み
- 特定部位を押すと痛みが増す
- 下腹部にしこりがある
- 意識が朦朧とするレベルの貧血
- 経血量の増加
- 血便
- 吐血
- 黒っぽい色の嘔吐
- お腹だけぽっこり出ている(腹部膨満感)
生理中はどうすればいい?
病院で検査をする場合、結果が不正確になる可能性があるため、生理中の受診は控えることをおすすめします。
また、おりもの異常で受診する際も生理中は検査ができないケースが多いです。
生理中でも受診できるケース
不正出血、月経痛、月経過多、下腹部痛等は、生理中でも受診できます。
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右の下腹部痛を放置するリスク

放置すると、卵巣がんなどの深刻な病気を発症するリスクが高まります。また、腫瘍が巨大化したり、卵巣が壊死するなど、不妊や流産を起こすリスクが高まることも多いです。
「たかが腹痛」と軽視せず、早期受診することをおすすめします。
行くのは婦人科でいい?
婦人科の受診をおすすめします。
婦人科を探す
なかなか妊娠しない等、「不妊」が疑われる場合には、産婦人科を受診してください。
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婦人科に行く際の準備
婦人科を受診する際は、できるだけ着脱しやすいスカートで行くことをおすすめします。
また、問診時に医師に伝えたい内容を事前にまとめておくと、スムーズに診察が進みます。