授乳中のしこりの取り方!痛くないとき、痛いときの対処法も|医師監修
公開日:2019-08-22 | 更新日:2022-09-05
「授乳中、おっぱいのしこりが取れない!」
「しこりは痛くないけど・・・病院に行ったほうがいいの?」
この記事では、お医者さんが「しこりの解消法」や、「痛みがあるときにすべき行動」を解説。ママにとって心配な乳がんとの区別の方法も聞きました。
経歴
2013年 東京大学医学部医学科卒業
2013年 川崎市立川崎病院勤務
2015年 神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科
現在は、日本産婦人科学会認定の産婦人科専門医として活躍中。
情報があふれ、正しい情報の選択がますます困難になっている昨今、何を信じればいいか不安でたまらない人の助けに少しでもなるよう、情報発信しています。
しこりが取れない原因
しこりがとれない原因は何ですか?
以下の3つが考えられます。
- 母乳が溜まってドロドロ状態になるため
- 母乳が塞がれて止められてしまうため
- 乳管が折れ曲っているため
それでは、次からしこりが取れないときの対処法をご紹介します。
しこり解消法
おっぱいの飲ませ方を変える
しこりを取るために、赤ちゃんが母乳をよく飲んでくれることが大切です。
<基本の授乳のやりかた>
赤ちゃんの身体が一直線になり、赤ちゃんのおへそがママ側に向けておっぱいと正面から向かい合うようにして、しっかり肌に密着させて授乳する。
その他、以下の方法も試してみてください。
<おすすめ授乳方法の工夫例>
- 縦抱きやフットボール抱きなど、姿勢を変えて授乳する
- 1回ごと左右のおっぱいを交互にあげるようにする。
- しこり部分が、赤ちゃんの上唇または下唇にあたるように授乳する
- しこりの根元を押さえ、乳頭に刺激を与えながら母乳を出すようにする
しこり解消法②「マッサージをする」
乳管閉塞が原因の場合、詰まりを解消するためにしこりがある部分を軽くマッサージしてください。
リバース・プレッシャー・ソフトニング(RPS)法
自分の手で胸壁にむかって浮腫んでいる乳輪にやさしく圧を数秒かけ、浮腫みを軽減させる方法で、滞っている乳汁を出します。
その他、以下のようなマッサージ方法もあります。
<おすすめマッサージの例>
- 授乳前に、温かいシャワーでしこり部分をマッサージする。
- 溜まった母乳を押し出すイメージで、乳頭に向けてゆっくり押すようにマッサージする。
- 乳頭・乳輪周辺を優しくもむようにマッサージする。
- おっぱいの根元部をほぐすようにマッサージする。
<注意>
しこりがガチガチに固くなってしまい、痛みが強い場合には、自己流でマッサージはせず、助産師さん等専門の方のマッサージを受けるようにしてください。
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しこり解消法③「食事を改善する」

暖かいものを食べて、水分をとってください。血行をよくすることが大事です。
これをとればいい、これダメという栄養素や食品はありません。自分の好みのものを、できる範囲でバランスよく摂取するよう心がけてください。
体を冷やすものばかりではなく、温かいものを食べることを意識してください。ハトムギやルイボスティーなどの水分をしっかり取ることも大切。血行をよくすることが大切です。
しこり対策
しこり対策としてできることを、4つ紹介します。
母乳を長時間溜め込まない
授乳回数を多めにして、赤ちゃんに母乳を飲んでもらいましょう。
授乳回数を増やすのが難しい場合、間隔が開いてしまう場合は搾乳もしましょう。
窮屈な下着を使用しない
締め付けが強いブラジャーを使用すると、乳房が必要以上に圧迫され、乳腺を詰まらせる恐れがあります。
仰向けで寝る
いつも横向きに寝ていると、下のおっぱいの乳腺を圧迫し、乳腺炎を引き起こすケースがあるので、できるだけ仰向けで寝ましょう。
肩をまわす(肩甲骨を動かす)
肩甲骨周囲の筋肉が凝り固まっていると、胸腺の循環が阻害され、母乳量が減少する、しこりができる等が起こりやすくなるため、肩まわしを意識して行いましょう。
しこりが痛くない場合

痛くないときは、しばらく様子をみても大丈夫なのでしょうか?
しこりはあるけれど痛みはないからと、そのまま放置するのは乳腺炎が起きたり、そこから感染性乳腺炎が起こって膿が溜まることもあったりするので危険です。
痛みがない段階から早めに対処することで、悪化を予防できます。
しこりが痛い場合
しこりが痛いとき、何が原因なのでしょうか?
乳管閉塞
閉塞した乳管や、母乳が詰まった乳管は、母乳がスムーズに流れなくなります。すると、乳管内に圧がかかり、ひりひり感や圧痛を起こし、固いしこりが生じるケースがあります。
乳腺炎
痛みを伴い赤くっている場合は乳腺炎の恐れがあります。
<乳腺炎の対処法>
- 母乳をいつも空っぽ状態にしておくために、授乳回数を増やし、赤ちゃんが飲みたいときに飲みたい分だけ授乳する。
- 夜中の2時~6時の間(母乳を作るホルモンが活性化し分泌が増えるといわれている時間)に搾乳を行う。搾乳の際は、しこりに少し圧をかけながら、30分以内に行うようにする。
- しこりは痛みにくわえて熱を帯びているケースが多いため、冷却シートやアイスパック等を用いて冷やしながら熱をとる。
- 血行を改善する。
<注意>
痛みを伴う場合は、放置するのは危険です。すぐに病院を受診してくださいね
乳がんとの見分け方
乳がんかも・・・と不安です。
授乳中のしこりと、乳がんとの見分け方はありますか?

以下のようなしこりが確認できる場合は、早めに病院を受診しましょう。
- 授乳中のしこりを取る方法をいろいろ試したがしこりがとれない場合
- なかなか取れないしこりを触ると、ゴリゴリという感じがする場合
- しこり自体に痛みがない場合
- しこりが動かない場合
<注意>
乳房にえくぼ状のへこみが生じている場合や、乳頭から分泌物が出ている場合、乳輪部分や乳頭部分にただれ等がみられる場合も注意が必要です。
病院受診の場合
受診は何科?
出産した病院の産婦人科や、婦人科・乳腺外科の受診をおすすめします。
病院を受診する目安
しこりに加えて、乳房が熱を帯びたようになり赤くなる、38度以上の発熱、寒気、頭痛、関節痛、押すとひどく痛む等の場合には速やかに病院を受診することをおすすめします。
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参考
メルクマニュアル-乳腺炎
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/18-婦人科および産科/産褥の管理と関連疾患/乳腺炎
しんしろ助産所-母乳通信
http://www.city.shinshiro.lg.jp/index.cfm/13,34231,c,html/34231/bonyuu-tuushin06.pdf